三角は負? |
■実例 |
企業の決算報告や会計関連の本を読んでいると、
マイナスを表すのに「▲100,000」や「△100,000」といった上向きの三角形が使われていることがあります。
しかしこの書き方、初めて見た人は全く逆、つまり「プラス」という意味に捉えるのではないでしょうか。 それは、水平な底辺を持つ三角形を上向き矢印の省略形と解釈するからだと考えられます。 実際に、株式といった会計に近い分野の表記でさえ、 「プラス」の意味で上向きの三角を用いている例が多くあります。 こちらの表記はとても直感的で、誰にも教わることなしに自然とその意味が分かります。 決算報告書などは一般の人も読むことがあるわけですから、 なるべく直感的であるべきです。 マイナスを表すのに何か記号を使うとしても、 「▽(逆三角)」といった下向きの記号か、 少なくとも「□(四角)」などの方向性を持たない記号にすべきではないでしょうか。
(補足) |
■色と方向 |
マイナスに「▽」を用いるのは不適切ですが、
プラスに「△」、マイナスに「▽」を使うのはとても直感的です。
ただこれも、あまり大量に使ってしまうと、どれがプラスでどれがマイナスか分かりにくくなるという欠点もあります。
その点、新聞の株価欄には工夫が凝らされており、プラスに「△(上向き白矢印)」、マイナスに「▼(下向き黒矢印)」を用いることで、
かなり見分けやすい表記となっています。
これならば、一面黒色となっている日には平均株価が大きく下がったんだな、ということがすぐに分かります。 では、なぜプラスが白で、マイナスが黒なのでしょうか。 これはおそらく、株価が上がるという明るいイメージが白を連想させるからだと思います。 ところで、基本的に白黒で印刷される新聞と違い、Webページでは様々な色が使えます。 先ほど紹介したYOMIURI ONLINEでは、プラスに上向き「青」三角、マイナスに下向き「赤」三角を用いていました。 一方、NIKKEI NETでは、下図のようにプラスに上向き「赤」三角、マイナスに下向き「緑」三角を用いています。 「赤」には色から本能的に想像される「活発」「危機(→赤字)」というイメージがあります。 一方、「青」や「緑」は「安心」「沈静」というイメージがあります。 YOMIURI ONLINEでの、プラスに「青」、マイナスに「赤」というのは、「安心の青」と「危機の赤(または赤字の赤)」という、 株価の意味を解釈した上での表記となっています。 一方、NIKKEI NETでのプラス「赤」、マイナスに「緑」というのは、「活発の赤」「沈静の緑」という、 純粋に数値の増減のみに着目した表記となっています。 新聞のイメージとは逆のようで、面白いですね。 同様のことは、株価表記以外にも見られます。 NHKの天気予報では、高気圧を「青」、低気圧を「赤」で表しています。 これは、高気圧のときは晴れていて空が「青」色で、低気圧のときは雨が降っていて危険だから「赤」、なのだそうです (気象予報士・大野治夫先生のお話より)。 しかし、気温の前日比の表記では、高い場合を「赤」で、低い場合を「青」で表しています。 これはサーモグラフィーでの使い方と同じですね。 以上の例から分かるように、プラスとマイナスにどの色を対応させるかは時と場合によります。 上に挙げた色の使い方はどれもそれなりに合理的であるため、統一するのは難しいかもしれません。 ただ、株価の表記などの全く同じ事柄に関しては、できるだけ各社同じ色を用いていってもらいたいですね。 |
■まとめ |
三角は方向性を持つため、「マイナス」のようなどちらかと言えば下向きの方向性を持つ意味を表す記号として
上向きの三角を用いるのは不適切だと考えられます。
また、三角の色については、「上向きだったら○色」と統一するのは非常に難しいようです。
つまり、 三角形はその色を含めて、慎重に用いられるべき なのです。 |
2008.09.23掲載 |