矢印と宇宙人 |
■宇宙人へのメッセージ |
1972年に打ち上げられたパイオニア10号には、以下のような金属板が取り付けられていました。
この金属板の目的は、地球外の知的生命体(いわゆる宇宙人)がこれを発見したときに、我々の存在を知らせることでした。
したがってここに描かれた内容は、言語や文化に依存しないものでなければなりません。 この板の下部にはこの探査機の軌道を示すため、 地球から木星と土星の間を通る矢印がひかれています。 矢印の先端にはこの探査機の概形が描かれています。 しかしこの図案に対し、Scientific American誌に載った記事が 「矢印は人為的な記号であり、地球外の知的生命体はその意味を理解できない」 と批判したようです。 この批判は正しいのでしょうか。 |
■矢印はユニバーサルデザインか |
少なくとも地球においては、全世界で矢印は使われています。
しかしそれは一般的な社会においての話であり、
少数民族など文字を持たない文化においては矢印は通じないと考えられます。
もちろん、この板を見てその意味を理解しうる宇宙人なら文字に相当する文化を持っているかもしれませんが、
その文化が「矢」という武器を使用していなかった場合はおそらく理解できないと考えられます。 一方で、「矢印の形を見れば、先端方向への向きを表すことは想像できる」と主張する人もいるかもしれません。 確かに、ペンや新幹線のようにとがっている方向に進むものは多くあります。 しかし、矢印の意味に慣らされてしまっている私たちはなかなか気づかないことですが、 下記の例のように、「矢印」の形が別の意味を持つことは十分に考えられます。 次の写真では、「矢印」のような足跡がたくさん描かれていますが、 その進行方向は私たちが使っている矢印の意味とは全く逆になっています。 つまり、「矢印」の形が表す方向は必ずしも一つではないということになります。 足跡で方向を表すことはあり得ない、という意見もあると思いますが、 2世紀ごろに作られた世界で最初の指し示し図とされるものでは、 売春宿がある方向を足跡を用いて示しています(*)。 つまり、宇宙人の足が鳥のような形をしていた場合、 逆の意味を持つ「矢印」が使われていることは十分にあり得ます。
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■まとめ |
冒頭の金属板を作った科学者は、
矢印があまりに生活に溶け込んでいるため
矢印が誰にでも通じうる記号だと勘違いしてしまったのでしょう。
しかし矢印はあくまで人間の意図的な学習によりその意味が獲得される記号であり、
全ての生物がその意味を理解しうるものではないということです。
つまり、 矢印を理解できない宇宙人がいる可能性は十分にある ということになります。 矢印というものはあまりに当たり前の存在となってしまっていますが、 一度立ち止まって、矢印についてじっくり考えてみることも必要そうです。 |
2008.11.23掲載、2011.5.2修正 |